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ワガママMAGAZINE

vol.12 昭和の名曲を生演奏で歌おう:奏でる人と歌う人でつくる、ひとつの時間

2026-03-20
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春の気配が少しずつ感じられる3月の午後。
生演奏に合わせて、その日集まった人たちが歌う特別な時間の始まり。はじめは静けさのあった会場も次第に表情を変え、空気が開いていく。その変化の中に、このイベントの特徴があった。

◼︎「歌いたい」わくわくを持って集まる午後
2026年3月10日。肌寒い雨の朝から一変して、曇り空から日差しの射す昼下がり。ラコルタ柏にて、グランドアンサンブルGo!柏による【昭和の名曲を生演奏で歌おう】の開始時間14時が近づいてきた。

30人余りの参加者がぞくぞくと席を埋めていく。友人や家族と誘い合わせて参加される方もいれば、「ひとりで思い切って来てみた」と話す方もいた。グランドアンサンブルGo!柏の特製プログラムに16曲(うち楽団のみの演奏が2曲)が並ぶ。開始時の参加者の表情には少し緊張感があったが、すでに歌うことを楽しみにしている様子が伝わってきた。

◼︎聴くから、ともに歌う時間へ
グランドアンサンブルGo!柏は現在7名(うちオリジナルメンバー4人)、22年前の歴史ある楽団だ。これまで、介護施設や近隣センター、市のイベントなどさまざまな場所で演奏活動をしてきた。これまでは演奏を聴いてもらうスタイルで、クラシックを中心とした活動が多かったが、コロナ以降は演奏機会が減少。その中で生まれたのが、参加者が一緒に歌う今回の形式だった。

【昭和の名曲を生演奏で歌おう】は、今回で2回目の開催となる。2024年秋に開催した1回目の好評を受けて継続して企画された。演奏を聴くだけでもない、歌の教室でもない。参加者が歌を楽しむことを中心にしたイベントである。メンバー一丸となって、新たな取り組みとして続けている。
◼︎重なる声が場の温度を変えていく
「間違えてもいいし、うまく歌わなくてもいいんです。皆さん元気に声に出して歌ってください。」
司会の坂庭 輝雄(さかにわ てるお)さんの説明からイベントは始まる。坂庭さんのこの一言が、まだどこか控えめな会場の空気をやわらかくしていた。1曲目の楽団のみの演奏曲『少年時代』が響き、開演。

曲が進むごとに、歌声は次第に大きくなり、表情もやわらいでいった。マイクを手に取って歌う人もいれば、席で口ずさみながら周囲の歌に耳を傾ける人もいる。マイクを譲り合ったり、渡し合ったり、時には押し付け合ったりする場面もあった。声が詰まると自然に周りから助け舟の歌声が聞こえ、歌い終わってマイクを返す人に「よかったよ」と声を掛け合う姿も見られた。
▲手話体験の様子、右の写真では「イタリア」の手話を体験中。
▲プリザーブドフラワー体験の様子。
◼︎支える音に込められた、もうひとつの楽しさ

歌声を支えているのが、グランドアンサンブルGo!柏の生演奏。

司会を務めた坂庭さんは普段ベースやギターを担当し、歌うことも好きだという。『誰でも歌える昭和の名曲』をテーマに選曲を行っている。戦後の暗い時代に数少ない娯楽が歌や音楽だったと話す坂庭さんの、参加者の思い出を重ねてもらいたいという気持ちがある。曲数も多すぎず少なすぎずを意識しており、16曲という構成もそのバランスの中で決められている。

坂庭さんは、「声を出して元気に歌えることが、何より健康なんじゃないでしょうか。」、そして「地域で活動を続けられること、参加者が笑顔で何も考えずに歌ってくれることが嬉しい。」と話す。1時間半にわたって生演奏を続けるためには、相応の準備や練習が必要になる。それでも続けているのは、自分たち自身も演奏を楽しんでいるからこそだと感じた。「今後も、1年に1回を目安に続けていきたい。」という思いも話してくれた。
▲手話語りの様子。
◼︎歌い終えたあとに広がる表情と会話

休憩時間には隣同士で自然と会話が生まれていた。初めて会う人同士でもやり取りが生まれ、会場の空気は開始時とは明らかに変わっていた。

イベント終了後、参加者の表情はどこかすっきりとしていた。多数の「楽しかった」という声、また、「来てよかった」「歌える場所を探していた」という声も聞かれた。実際に話を聞くと、皆さんそれぞれに歌や音楽への思いを持っていることが伝わってくる。昭和の名曲の旋律や歌詞に、その時代の記憶や感情を重ねながら歌っていたのではないだろうか。

◼︎ただ楽しむことが、場をつくっていく

歌うことを楽しみに集まってきた人たちが、自分のペースで声を重ねていく。誰もが互いの歌を受け止める空気があり、うまくできるかどうかなどと評価される場ではなく、好きなことをそのまま楽しんでいいと感じられた。

その空気は、参加者だけで生まれているものではない。生演奏を支える準備や練習、そして場の様子を見ながら関わり続ける主催者がいてこそ成り立っている。演奏する人と歌う人に分かれているようでいて、どちらもそれぞれの『好き』を大切に楽しんでいることが伝わってきた。音楽を通じた交流だけでなく、自分の役割のまま互いに好きなことを楽しんで、一緒に時間を作っていく過程が見えた。
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