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ワガママMAGAZINE

vol.16 文字を声で届けよう~音訳体験~:マイクの向こうに広がる音訳の世界

2026-07-20
注目オススメ
「ゆっくりね。リラックスして」
ラコルタ柏の録音室で、子どもたちが一人ずつマイクの前に座る。

2026年8月10日(月)に開催された『文字を声で届けよう~音訳体験~』で、柏市内の小学生たちが『音訳』に取り組んだ。

◼ はじめて座る、マイクの前
イベントは、音訳とはどのようなものなのかを学ぶ時間から始まる。視覚障害と一言でいっても、見え方は一人ひとり異なる。文字を声に変えるとはどういうことか、どうすれば相手に分かりやすく伝わるのか。サークルの皆さんの説明を聞きながら、子どもたちは音訳への理解を深めていく。
▲録音室へ向かう。右は入口に下がる「録音中」の札。
その後は、みんなで録音室へ移動して、いよいよ録音体験が始まる。

録音は2つのブースで順番に行われる。持参した本や、これまで学校で学んできた教科書の中から、それぞれ何を読むかを子どもたち自身で選んでいく。率先して録音ブースへ入る子もいれば、待つ間に何度も文章を読み返し、練習する子もいた。
子どもたちは録音室のマイクや録音設備を見渡し、気になった点を次々に質問していた。録音の際には、周囲の音が入っていないかを確認する騒音チェックも行う。「騒音チェックをすることを知って面白かった」と話す参加者もいた。

実際にマイクの前に座ってみることで、読むことの難しさに気づいた子どもたちもいた。「噛まないようにしながら、声の大きさや読む速さにも気をつけなければいけなくて、すごく難しかった」という感想もあった。ただ文字を読むだけではない。子どもたちが自分の声を確かめながら、何度も録音に挑戦する姿も印象的だった。もともと音読が好きで参加した子は、「前からやってみたかった。楽しかった」と話す。体験を終えた子どもたちからは、「来年も参加したい」という声も上がった。
▲ブースのマイクと原稿を置く台。右は音を確かめる画面。
◼ 読むことは伝えること
今回、体験をサポートしたのは、柏市朗読奉仕サークルの皆さん。

同サークルは1979年から活動を続け、2026年に48年目を迎える。視覚障害のある方のために、広報かしわや選挙公報、市議会だより、社協広報紙などを音訳し、CDやデータとして利用者に届けている。広報かしわのCDを制作する際には、14~15人ほどの班で分担し、1つの号の制作に2日ほどかかるそうだ。また、個人から依頼を受けた図書や新聞、雑誌の音訳のほか、対面朗読にも取り組む。今回のように福祉関連のイベントに参加し、音訳を知ってもらうための企画を行うこともある。
▲左はCDの複製機。右は音を聴くための機器。
音読と音訳は、読むという行為そのものは大きく変わらない。変わるのは、誰に向けて読むかということ。サークルの皆さんが大切にしているのは、『伝える』という気持ちだ。

音訳するのは書かれている文字だけではない。図や表、系図や地図など、目で見て得られる情報を音だけで分かるようにしたり、その場の雰囲気を言葉で表したりするには、どんな工夫が必要なのか。見えているものを一度イメージし、メンバーそれぞれが自分の言葉でどう表現するかを考える。広報なのか、小説なのか、題材によっても伝え方は変わる。何をどう伝えるのかを考えるところから、一人ひとりの音訳が始まる。

「自分のために読むのではなく、マイクの向こうの人に向けて読むことを忘れない」
「これでいい、という終わりはないんです」

日々振り返りながら、より分かりやすく伝える方法を考え続けているという。

サークルの皆さんが活動を続ける中で、自分たちの声が誰かに届いたことを実感する瞬間もある。CDの返却時に手紙が添えられていたり、「楽しんで聞かせてもらいました」と電話をもらったりすることもあるという。

◼ 届いた声が楽しみをつなぐ
今回お話を伺ったメンバーの一人は、「本を読むことがとにかく好き」だったことが、活動を始めたきっかけだと話す。視覚障害のある方にも、本を読む楽しみを感じてほしい。何かお手伝いできることはないかと考えていた時に、音訳ボランティア養成講座の募集を見つけて参加した。同サークルでは、3年ごとに開講されるこの講座の修了者が、新たなメンバーとして加わっている。
活動を始めてからは、「昔読みかけた本を読んでほしい」「もう一度、好きだった本を読んでほしい」と依頼を受けたこともあるという。本を読むことが好きだったことから始まった活動は、音訳を通して、誰かが読みかけたままになっていた本のつづきや、もう一度読みたかった一冊を楽しむことにもつながっている。

イベントを終えた子どもたちは、自分の声を録音したCDを手に帰宅した。

子どもたちがマイクの前で感じた、声で伝えることの難しさや楽しさ。その体験が、音訳や、誰かに声を届けることに興味を持つきっかけになるかもしれない。
必要な情報を届けること。目の前にはいない誰かのことを想像し、その人に分かるように言葉を選ぶこと。そうした積み重ねの中で、柏市朗読奉仕サークルの活動は47年間続いてきた。そして今日も、メンバー一人ひとりの声が誰かのもとへ届けられている。
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